2020/06/05インタビュー
【インタビュー記事】元新国立劇場バレエ団ファーストソリスト:さいとう美帆
【インタビュー記事】元新国立劇場バレエ団ファーストソリスト:さいとう美帆

今回のインタビューは元新国立劇場バレエ団ファーストソリストとして活躍されていた さいとう美帆さん。 UNBLANCHE留学サポートの提携講師としてたくさんの若きダンサーの指導にあたってます。 全てのバレエファンにとってヒントがたくさん詰まっているインタビューです。

物置から出てきたトウシューズ

UNBLANCHE:バレエは何がきっかけで始めたのですか?

MIHO:私が5歳の時に、歳の離れた姉たちが小さい頃、発表会の楽屋でメイクと衣装を着て楽しそうにしている写真を見てやりたいと言ったそうです。なぜか母は近所のモダンダンス教室に私を通わせました。
ストレッチやバーなどもしていましたが、マット運動や馬跳びをしたりしていました。
7歳の時に家の物置を家族で掃除していると姉が履いていた小さなトウシューズが出てきて、
足先しか入らず(全幕初主演作品シンデレラなのに履けず(笑))、自分も履きたいとその時初めてクラシックバレエとの違いを知りました。

UNBLANCHE:いつ頃から「プロ」を目指し始めましたか?

MIHO:小学生の頃から漠然と夢はバレリーナでしたが、16歳で新潟から東京のAMスチュ-デンツに通い始めて、牧阿佐美先生のクラスを受けるようになった時からが漠然とした夢から現実的に思うようになりましたね。
とても熱心に指導して下さっていた地元の先生からは、急ぎすぎて変な癖がついてしまわないようにと、他の子からしたら少し遅めにAMスチュ-デンツに入りました。すると入ったばかりにもかかわらず、AMスチュ-デンツ公演で主演のチャンスを頂いた時は信じられず、またしっかり踊りきらなければという思いでした。

UNBLANCHE:ターニングポイントはありましたか?

MIHO:17歳で出たコンクールでも思いがけずジゼルのVaで1位を頂き、地元教室の記念公演ではジゼル1幕の主演をさせて頂き、その公演を阿佐美先生がご覧になって下さっていました。
公演後に阿佐美先生が私の地元の先生を通じて「日本で初めて国立のバレエ研修所ができるので、合格するかどうかは分からないけれど受けてみないか」と仰って頂いたのが明確なターニングポイントですね。
そこから絶対に研修所に入り、バレエ団にも入りたいという気持ちになりました。

これがバレエダンサーの生活なのか!

UNBLANCHE:新国立劇場バレエ研修所ではどんな生活でしたか?

MIHO:当時は月曜日から金曜日まで朝10:00から通常クラスが1時間半、その後ポワントクラス、お昼休憩、曜日によってVaクラスやコンディショニング、フラメンコなどで、社交ダンスやコンテンポラリーも短い期間でしたが行いました。15:00まではスタジオで、そこから新国立劇場の講義室に移動して16:00から17:30までバレエ史や解剖学、英会話などの座学の講義でした。それまでは普通の学校が終わってからバレエ教室に通う生活でしたが、研修所に入ると一日中バレエの生活にガラッと変わり、これがバレエダンサーの生活なのかと知ることになりました。

UNBLANCHE:ダンサーとして自分の身体を知るってやはり大事ですよね。

MIHO:それまではなぜ痛みが出るのか、なぜ痛みが消えないのかと、分からなかったことがコンディショニングや解剖学のおかげで使い方や必要な筋肉強化が分かり、当時痛めていた股関節の痛みがなくなりました。またバレエ団公演やオペラ、演劇、歌舞伎、フラメンコの公演鑑賞などもさせて頂き、表現力やアーティストに必要なあらゆることを吸収させて頂いたと思います。バレエ団のクラスやリハーサル、公演にも出させて頂き、大変有意義な2年間を過ごさせて頂きました。

強い思い

UNBLANCHE:研修所からでもバレエ団に入団するにはオーディションを?

MIHO:研修所に入ったからといってバレエ団に入れる保証はなく、私は特に161センチと当時でも小柄な方でしたのでソリストで入れるかどうかしかなく、一般のバレエ団オーディションと一緒に行われたのでドキドキでした。それでもバレエ団オーディションの時も研修所オーディションの時も、入りたいという強い思いは一緒でした。強い思いがあると凄く練習しますよね。練習することで自信に繋がるので本番に集中でき、力を発揮しやすいのだと思います。

UNBLANCHE:史上最年少で新国立劇場バレエ団の主役に抜擢!プレッシャーなどありましたか?

MIHO:プレッシャーの塊でした。(苦笑)
シンデレラの主演が発表されて知ったのは、お知り合いからの、Webに載っていたというおめでとう連絡でした。
信じられず、嬉しさと心配と緊張、プレッシャーの複雑な気持ちが一気にきました。

「緊張ではなく集中しなさい」

UNBLANCHE:どのように美帆さんの中で役を作っていきましたか?

MIHO:先輩の方の踊りを袖から見学させて頂いたり、ピアニストさんからお勧めされたシンデレラの映画を見たり、練習も沢山しましたし、イメ-ジトレーニングもしました。普段の生活の中にも役柄のヒントがあったりするので妄想?しながらイメージをしたり。阿佐美先生からは「緊張でなく集中しなさい」と仰って頂いた言葉は、その後もいつも自分に言い聞かせて舞台に臨んでいました。
主演の方が楽屋やスタッフの皆さんに差し入れするのが恒例なのですが、私は手作りのパンプキンタルトを差し入れさせて頂きました。研修所時代に出演させて頂いた舞台の主演の方(憧れの先輩)の差し入れが手作りのお菓子だったこともありますね。それほど準備万端だったのと、料理で気を紛らわしながらシンデレラになった気持ちでイメ-ジトレ-ニングになっていました。(笑)手作りの差し入れはそれが最初で最後でしたが….。(苦笑)
すべては周りの方々の支えがあったからこそ行えたことで、感謝の気持ちでいっぱいでした。

UNBLANCHE:ダンサーには怪我がつきものですが、美帆さんも怪我、手術を乗り越えてますよね。

MIHO:バレエ団での生活は毎日のクラス、リハーサル、舞台とあらゆる振付家の作品や、世界一流のダンサーたちやゲストコーチからの指導など充実した日々でした。ですが、私の場合筋肉が堅いという点で疲労が蓄積されやすく、どうしても回復に時間がかかっていました。
ある主演本番2日前にクラス中のジャンプでブチっと音がしたのを覚えています。ルルべするのも力が入らない状態でした。本公演3回、その後地方公演も続いていました。その時は何とか踊りきりましたが、その怪我が後に三角骨が中で割れて手術が必要となったのだと思います。ダンサーやアスリートに怪我は付き物と言われますが、日々の予防やケアがどれだけ大切かをお伝えしたいです。

UNBLANCHE:ジャイロの資格を持っていますが、怪我を経験したからこそですか?

MIHO:手術後のリハビリでは、ジャイロキネシスやジャイロトニックを取り入れて復帰することができました。ジャイロキネシスは考案されたジュリオ・ホバス氏自身もプロのバレエダンサーで自身の怪我の克復のため、ヨガ、ピラティス、太極拳、水泳などあらゆるものが取り入れられており、ジャイロの円や螺旋という意味のとおりバレエの曲線美や流れるような動き、呼吸や身体の動きがよりバレエにそのまま通じています。
リハビリの期間ジャイロをしていたからこそ復帰した後、踊りやすくなっていました。空間などもイメージしやすく、ジャイロのこれがバレエのこれに繋がっていると気づき出した時から指導者として、上達や怪我に悩む子たちに伝えてあげられたらと思うようになりました。

留学後も安心してバレエ生活を送り続けられるように後押し

UNBLANCHE:UNBLANCHE留学サポートの方で、提携講師として海外のバレエ学校入学を目指している若きダンサーの指導に当られていますが、彼女たちから感じることはありますか?

MIHO:UNBLANCHEさんはバレエが大好きで留学をされたい方々、プロのダンサーや、バレエに携わることを目指したいという若い方々をサポートされていらっしゃいます。留学や海外に行かれる前はご本人も親御さんもあちらの事情や言葉の壁など、日常会話だけでは難しい契約のことなどもあるかと思いますが、そういったことをサポートして下さったり、これから慣れない海外で、バレエと生活を一人でしていかれることはご自身も親御さんもとても不安だと思いますので、国内外で活躍されていらっしゃるプロのダンサーの方々が、今現在の技術面や今後留学されて一人でバレエ生活を送るための準備(コンディショニング、栄養学など)もサポートして下さいます。このように留学を成功させるだけでなく、留学された後も安心してバレエ生活を送り続けられるように後押しして下さいますので、とても素晴らしいと思います。留学に向けた対策レッスンで感じたことは、皆さん各々今まで一生懸命練習されてきたことが身についていらっしゃり、素晴らしい面もたくさん見させて頂きました。一方で、メソッドや、振付家など、今後、海外のバレエ学校やバレエ団に行かれると基本的に独自のスタイルが有り、様々な教え方があると思います。

踊りこなせる、挑戦する覚悟

UNBLANCHE:習ってきたものと異なったメソッドやスタイルを取り入れるのに苦戦している若きダンサーがたくさんいると感じるのですが。

MIHO:私も研修所時代に教えて頂いた講師の方々のメソッドは各々に違っていました。
それはバレエ団に入っても様々な作品、ロシア派、フランス派、ロイヤル派、バランシン派、コンテンポラリーなどスタイルが異なる作品を踊りこなせる準備になったと思います。最終的にはどのスタイルでも対応できるような柔軟性、忍耐力、基礎の強さが必要で、このスタイルで練習してきたが、どんなタイプの振り付けでも踊りこなせる、又は挑戦する覚悟でいます!という心持ちでいることが大事だと思います。
そのように柔軟に対応できるようにしていくことを意識して、留学サポートのプログラムも行っていかれると、より留学の成功率も上がってくるかと思います。また、怪我の防止やテクニック向上のための手段として、ジャンルを超えたトレーニングをしていくなど他のスキルがあることは、後々強みや有利になっていきますので、どんどん経験をされていかれると良いと思います。

素直な姿勢、感謝の気持ちを忘れずに

UNBLANCHE:最後に、若きダンサーにエールを!

MIHO:皆さんは今十代で身長も体型も変化する時期だと思います。バレエダンサーは体重管理、怪我や病気をしないための栄養摂取、身体を大事に大切に、日々の練習を自分のなりたい自分に近づくために頑張って下さい。バレエに対しても素直な姿勢で、感謝の気持ちを忘れず努力をしていると、自ずと周りの方々が何らかの形で支えて下さいますし、良い出会いやチャンスが巡ってくると思います。沢山のことを吸収して素晴らしいダンサー、素敵な人になって下さい。

THE FUTURE STARTS TODAY, NOT TOMORROW

UNBLANCHEでは、あなたのバレエが好きな気持ちを応援します。自分にどんな学校が合うのか、どんなバレエ団があるのか。
バレエを通じてどんなキャリアを作っていくのか、今はまだわからないことがたくさんあると思いますが、一人ひとりに合ったバレエ人生をサポートします。

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